幻の流派を追え!!
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■クエストシナリオ
担当:久条巧
対応レベル:‐
難易度:‐
成功報酬:-
参加人数:16人
サポート参加人数:-人
冒険期間:2007年02月01日 〜2007年11月31日
エリア:華仙教大国
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●伝説の男・過去
──華仙教大国首都・燕京
10年前‥‥
「ここから先は通す訳にはいかぬっ!!」
華仙教大国首都・燕京。
その月道を取り扱う月法院の前で、二人の男が相対峙していた。
剣を手に、『趙雲子龍』の名を継いだ若き剣士が目の前の巨漢に向かって構えを取る。
「勇ましいな。だが、悪いがそこを通らせてもらう‥‥」
そう呟くと、巨漢はゆっくりと構えを取る。
武器は持たない。ただ拳を握り、ゆっくりと前方に構えただけである。
「貴様‥‥徒手でくるというのか!!」
「ああ。貴様みたいなひよっこ如き、腕一本で十分だ‥‥」
巨漢の背後には、血を流し崩れている大勢の戦士達の姿があった。
「ぬかせっ!!」
瞬時に間合を詰める趙雲。
そして素早く巨漢の腕に向かって剣を叩きつけるが、腕はびくりともしない。
それどころか、趙雲の振りおろした剣がバキッとくだけ散ったのである。
「剣が砕けただとっ!!」
素早く後方に下がり、部下の持ってきた大刀をブゥンと振って構える。
「その体術、まさか『朧拳(ろうけん)』かっ?」
「ご名答。初めて見ただろう? 伝説の流派をよっ」
そう叫ぶと同時に、巨漢は素早く間合を詰めて、大刀を身構えた趙雲を、武器ごと殴り飛ばした。
──ゴキゴキゴキッ!!
骨の砕ける音が響く。
そして口から血を吹き出し、趙雲が其の場に崩れていった。
「み‥‥皆のもの‥‥誰かそいつを‥‥悪鬼を止めろ‥‥」
立ち上がりつつそう叫ぶ趙雲。
だが、既に動ける者は誰もいなかった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっはっはっはっ。趙雲の坊っちゃんよ。まだまだ鍛え方が足りないな。折角『趙雲子龍の英霊』が封じてある刀を手にしたというのに、受け取った本人がまだひよっこじゃあ、先代も静かに眠っていられないか‥‥もっと身体、鍛えておけや‥‥」
そう叫びつつ、『悪鬼』と呼ばれた巨漢は月道の中に消えていった‥‥。
●伝説の男・現在
──華仙教大国首都・燕京
「‥‥まだまだっ。これしきの修練で倒れるとは、貴様それでも男子かっ!!」
燕京の中都大興府・朱麗殿。
華仙教大国の政治の中枢であり、元首・海陵王の執務室のある所。
その中庭で、6人の武道家が足腰の鍛練を行なっている。
「ですが海陵王、もうこの姿勢ですでに三刻。限界です」
パンパンに張り詰めた腿をさすりつつ、倒れた青年はそう告げる。
「功夫(クンフー)が足りぬっ!! 『華仙教大国統一大武会・龍王』に参加するのならば、この程度の鍛練で弱音を吐いてはならぬ。今回こそ、あの少林寺一派に勝つ!!」
拳をグッと握り締め、そう力説する海陵王。
さて、ここで『華仙教大国統一大武会・龍王』について説明しよう。
海陵王が即位されて数年後、三国で定期的に行われている武会(武術大会)を一つに纏めた華仙教大国統一の大武会を行なおうということになった。
3年に1度それは行われ、覇者となったものには神獣の王たる字(あざな)が与えられた。
過去において覇者に与えられた字は『玄武王』『朱雀王』『白虎王』の3つのみ。
・『玄武王』は少林寺一派が代々受け継ぎ、現在までその名前が他の流派に渡されたことはない。
・『朱雀王』は長江南部の拳技。いわゆる南拳の流派の中で次々と代替わりを続けている。
現朱雀王は白眉拳の最高師範である白眉道人がその名を守っている。
・『白虎王』は華仙教大国西方の武術の一つ『朧拳(ろうけん)』が修めている。
朧拳の師範である天奉道士(てんほうどうし)はその素性が謎であり、また朧拳の道場がどこに在るのかさえ、詳しくは伝えられていない。
武会が行われるたびに出場し、常に上位に位置している『実践本意』の拳として知られている事以外は、今だ謎に包まれている。
そして神聖暦1002年秋。
次の『華仙教大国統一大武会・龍王』が開かれる。
与えられる字は『青龍王』。
華仙教大国最強の字を手にする為、各地で激しい特訓が繰り広げられていた。
「ハァハァハァハァ‥‥海陵王、そろそろ限界です‥‥」
若手拳士が其の場に座り込み、そう呟く。
「ううーむ。やむをえん。1刻休息とする」
その言葉と同時に、若手拳士達は其の場に座り込んだ。
「さて‥‥王よ、そろそろ執務の時間です」
その鍛練の一部始終を近くで見ていた海陵王の補佐官・完顔阿骨打(わんやんあぐだ)が、静かにそう告げる。
「う、うむ‥‥では、続きはまた夕刻。それまでは各自で功夫を積んでおくように!!」
──場所は変わって・海陵王執務室
大量の木簡・竹簡と羊皮紙に囲まれた執務室で、海陵王は眼の前に座っている側近達から次々と報告を受けていた。
「南宋元首より親書が届いております。南宋は昇竜以南から侵攻してくる南蛮の蛮族達に対しての守りを強化するべく、兵員を派遣して欲しいとの旨が届いております」
「阿骨打、派遣できる余剰兵員の選抜を」
一人の文官がそう告げると、海陵王は的確な指示を与えていく。
「北方、万里の城塞より報告です。モンゴル地方よりハンの氏族による侵攻が開始されました。これに対して、直に動けたのは、襲撃を受けた村の者たち僅か5名‥‥」
「モンゴルの奴等の兵員は?」
「報告では600と‥‥」
「直に派兵の準備を!!」
そう告げる海陵王に対して、文官がさらに説明を付け加える。
「いえ、その必要はありません、我が王。その5名により、モンゴルの騎馬600全てを討ち滅ぼしたと報告を受けています」
その言葉に、海陵王の眉も上がる。
「ほう。して、その5名とは?」
「孫策伯符の英霊を持つものと、その配下達としか告げられていません‥‥」
「ははははっ。孫策の英霊を持つ者か。これもまた数奇な運命だな‥‥」
そう告げると、海陵王は文官にさらに問い掛けた。
「それで、その5名の獲物は? いかな器械(きかい)を操る?」
「徒手と報告を受けています。しかも、全て『朧拳使い』と‥‥」
「朧拳使いか、朧四鋼拳か? それとも朧砕波拳か?」
「それらも操ると告げられていますが、なにより孫策らしき男は朧拳の『最源流技』を操るとか‥‥」
その言葉と同時に、海陵王は立上がった。
「阿骨打、どう思う?」
その問いの真意を、完顔阿骨打は瞬時に理解する。
「王の内に彼等を止めるのは難しいかと。ですが、朧拳の使い手となれば、まさに一騎当千。彼等は一人で1000人の武将を討ち滅ぼすと伝えられています‥‥彼等の力を得られれば良し。ですが、孫策伯符の英霊をもつ者ならば、いずれはこの華仙教大国をも手中に修めるべく動く事もあるかと‥‥」
そこで完顔阿骨打の言葉は止まる。
「遠慮はいらぬ、告げよ」
「南方に古くから伝わる拳技が一つ。古くは『呉王』と呼ばれたものの使う拳‥‥王は『八跋衝』と呼ばれる拳技を御存知ですか?」
「我が国東方の拳技だな。それが何か?」
「八跋衝もまた、『最源流技』が存在すると。そらの奥義には、幾つか不可思議な言伝えが存在すると。八跋衝は本来『蹴(蹴る)』『打(打つ)』『投(投げ技)』『拿(掴み技』『撃(衝撃打)』『劈(切断技)』『刺(刺技)』『気(内功・外功)』の全てを徒手にて行う流派。その難しさゆえ、今は伝える者は道士一人、弟子はいないという状況です。我等が弟子にそれらの技を継承させてみては」
しばし腕を組んで考える海陵王。
「しかし‥‥八跋衝の道士もまた自由なる人、今もこの華仙教大国の何処かを旅していると聞くが‥‥」
「では、そのものを探すよう手配はしておきます。必要ならば、見付け次第道士の元に弟子入りを頼むというのもよろしいかと‥‥」
そう告げると、完顔阿骨打は静かに立上がると、其の場から立ちさって行った。
「ふう。まさに戦乱の世か‥‥伝説の英霊、その力を受け継ぐ者がこれから増えるかと思うと‥‥」
そう呟きつつ、海陵王もまた、自らの手に刻まれた英霊の証しをじっと見つめた。
「ワシの中に眠る英霊は劉備玄徳‥‥また見ぬ英霊達は、いずれの君主の元に集うというのか‥‥」
●辻試合
とある村の村祭り。
そこはとても小さい村ながら、多くの人々が集っていた。
村のお祭りの余興の一つ、小武会が催されていたのである。
「さあさあさあさあ、次の挑戦者はどこのどいつだぁ? 見事俺に勝利したなら、この俺の持つ『英霊布』をくれてやるぜっ!!」
それは伝説の武人の英霊を呼び覚ますと伝えられている布。
それを身に纏い、英霊の名を告げる事で、英霊の力を布に呼び戻すことができるという。
この『英霊布』の他にも、刀、槍、大刀など、英霊を呼び戻す武具は多数存在している。
が、呼び戻す事の出来るものは、限られた者のみ。
そして1度呼び戻された英霊は、他の者の元には呼び戻されないという言伝えもあり、これら英霊を呼び戻す宝貝(パオペェ)は稀少なものである。
それがこんな片田舎の小さな村にある。
噂を聞きつけた武道家達はその少年に次々と挑んだ。
だが、今だその少年を討ち負かしたものはいない‥‥。
「どうしたどうしたぁ!! この俺様の中に眠っている『張飛翼徳』は、まだ戦えるといっているぜっ!! 祭りが終っても、いつでも相手してやるよっ。俺はもっと強くなって、『龍王』の称号を受けるんだからなっ!!」
少年もまた、『華仙教大国統一大武会・龍王』に出場する事を夢見ている。
悠久の歴史が流れる華仙教大国。
まもなく、大きな歴史の波が揺れはじめていく‥‥。